令和４年3月16日卒業式での校長式辞全文を掲載いたします。

 

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　本日、呉竹医療専門学校から、新たな一歩を踏み出さんとしている皆さん。呉竹医療専門学校を代表して、皆さんの卒業を心からお祝い申し上げます。誠におめでとう御座います。新型コロナウィルスの流行により数々の行事が中止を余儀なくされている最中で、卒業式を挙行できますことは、私たち教職員および在校生にとっても、大きな喜びであります。また、この日まで長きにわたり皆さんの勉学を支えて来られた保護者やご家族の方々には、ご卒業をお慶び申し上げますと共に、これまで私どもが賜りましたご理解とご協力に深く感謝を申し上げます。有り難う御座いました。

　今現在も新型コロナウィルス・オミクロン株の流行による蔓延防止等重点措置が再延長されている最中で、ご家族の方々にはご同席頂けなかったものの、このように皆さんに直接お話できることを大変嬉しく思います。

 

　さて、中国で最初に発表された新型コロナウィルス感染症は、瞬く間に日本を始め全世界にパンデミックをお越し、スペイン風邪が大流行した1918年（大正７年）以来の歴史に残る大災害の感染症となり、社会・経済・医療そして教育に甚大な影響を及ぼしました。この２年間はオンライン授業等で人と接する機会が減り孤独な勉学を強いられましたが、皆さんは忍耐強く自らを律し、そして様々な変化に対応する柔軟な力を身に付けて来られました。皆さん自身は負の体験ばかりだったと思っておられるでしょうが、どんな詰まらない、また、ムダと思われた苦労も後になってみると必ず貴重な、役に立つ経験だったと分かります。この２年間の苦労や心の負担は、気付いてはおられないでしょうが、皆さんを医療人として、より大きく成長させてくれているはずです。そして今回の経験は間もなくデビューする臨床の世界で大きな自信に繫がります。夢と責任を持って進んでください。

　卒業するとこれからは患者さんが先生です。日々の診療の中で、浮かんだ疑問はその日の内に調べておきましょう。この積み重ねが自分を成長させてくれます。また、小さな症状の変化や患者さんとのチョットした会話も色々なことを教えてくれています。目と耳と指先の感覚も研ぎ澄ましておきましょう。常に患者さんから学ぶ姿勢を忘れないで下さい。しかし、学んでばかりでは、患者さんから信頼はされません。安心と安全を提供して、始めて信頼を得ることが出来るようになります。昨年夏には東京オリンピックが開催されましたが、新型コロナウィルスの流行に備えて当時の首相は「安心・安全」を一組にして連発し、むしろ安心・安全が不安を増幅しているように感じられた人は少なくないと思われます。安心と安全は別物で、安全性とは言いますが、安心性とは言いません。また、安心感とは言いますが、安全感とは言いません。即ち、安心は気持ちであり主観的です。一方、安全とは危険の程度が許容範囲内にあると客観的に保証される状態を指します。我々医療人は安全な医療を提供して、患者様は安心をしてくださり、さらに心の安らぎが得られて始めて信頼を得ることが出来るようになります。技術を磨くと同時に、患者さんの声なき声を聞き漏らさないようにして下さい。この２年間で自らが体験した孤独や不安を、患者さん達は常日頃から感じておられます。皆さんは人の痛みを知ることができる、良き医療人になれるはずです。

　こんなエピソードがあります。クリーブランドクリニックというアメリカにある世界最高峰の医療を提供する病院の安全管理責任者のドクターが、これまた世界有数のハーバード大学で講演をされた時に、学生が手を挙げました。そして「私達の家族にクリーブランドクリニックで是非診て欲しい患者がいます。でも、受診はしません。何故ならクリニックには思いやりがないからです。先生はスタッフ達にどのような教育をされておられますか。」という質問でした。このショッキングな出来事をクリーブランドクリニック自らが、ＷＨＯの医療安全に関する会議の席で公表をしています･･･。

　最後に、これから先は何回も壁にぶつかるでしょう。そのような時に勇気が出る言葉を皆さんに贈っています。社会教育家、後藤静香の言葉です。

 

本気にすれば　大ていな事は出来る。

本気ですれば　なんでも面白い。

本気でして居ると　誰かが助けてくれる。

　　　　　　○

人間を幸福にするために

本気で働いて居る人間は

みんな幸福で

みんなえらい。

 

　呉竹の卒業生は凄いと一目置かれるように、頑張ってください。それでも気弱になった時には、この言葉を思い出して下さい。

　医療は卒業がスタートラインで、毎日が勉強です。皆さんが今後、益々飛躍されることを期待しています。

　皆さんの前途に幸多からんことを、心よりお祈りして式辞といたします。

　本日は、誠におめでとう御座います。

 

令和４年３月１６日

呉竹医療専門学校校長

松原　哲