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平成30年度卒業式 式辞

2019年03月14日


平成31年3月14日(木)に行われた卒業式において、細野昇校長より読み上げられた式辞全文を掲載します。
 
 
式 辞
 
暖かな日差しのもと、吹き渡る柔らかな風に、新しい息吹が感じられる季節になりました。また、本年は新しい元号を迎える記念すべき年でもあります。そのような中、本日、ご来賓、保護者、関係者の皆さまご列席のもとに、呉竹医療専門学校第8回の卒業式を挙行できますことは、私どもの大きな慶びであります。145名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。卒業式にあたり皆さんの今日までのご努力と研鑽とを、学校を代表して心からたたえ、お慶び申し上げます。また、卒業生を今日まで支え、励ましてこられたご父兄の皆様、ご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げますと共に、本校に対してのこれまでのご支援、ご協力に深く感謝申し上げます。
 
私は、平成28年の入学式で皆さんに、「医学は人、すなわち患者さんのためにあるということを心に刻んで頂きたい」と申し上げました。それは、医学が生きている人間を相手にする職業で、不注意が患者さんの命を奪いかねない職業であることを忘れて頂きたくないからです。医療人は間違いを起こしてはならないのであり、常に、患者さんが安心して治療を受けられるよう、最新の知識と技術を身につけていることを義務づけられているからです。
 
また、「崇高な精神に基づいて医療が実践できる人格を形成して頂きたい」とも申し上げました。それは、「医学」が「人」のためにあり、「人」のためとは、時に自らを省みることなく他者のために尽くことだからです。「医療人」は、私することなく、患者さんのことを最優先に考え治療できる精神を持った人でなければならないからです。
 
医療職は患者さんに触れ、病んでいる人々を治癒に導くという恩恵を与えることができる職業です。また、同時に患者さんから、直接感謝される機会も多く喜びも大きい仕事でもあります。医療は「人」のために尽くすといった意味で、崇高で、やりがいのある行為であると共に、大きな責任を伴うものであります。
 
どのような職業でもそうですが、とくに、医療の現場では公平無私な人格が求められ、あらゆる患者さんに対して平等に自身の持つ全ての力を傾注しなければなりません。「自分が楽だ」とか「自分のために」とかの邪な心を持ってはならないのです。
 
皆さんは本校での3年間で、私のお願いしたことを身に付けて頂けたと信じています。また、多くの困難を克服して「医学」を学び、その修得を通して、積極的・能動的に学習する態度が身に付いたことと思っています。人から与えられるのを待のではなく、自ら学ぶことを探し出し、自ら身に付ける方法を見付け出されたことでしょう。この基本的な態度こそが、医療人となった今、また、今後、生涯にわたって続く、新しい知識や技術の修得、自身の技術向上に必要な研鑽に耐える力になって行きます。
 
医療人には、どのような困難にも打ち勝つ強い意志と如何なる障害に直面しても決して諦めない根気強さが求められます。本校での3年間の学習を通して皆さんは、それらも獲得されたものと思っています。今こそ、手に入れた能力を遺憾なく発揮して、自信を持って医療人として社会に貢献して行ってください。
 
さて、少し私事を申し挙げます。私には、今までの教員生活で自分に課している、いくつかのルールがあります。一つは、「立ったままで授業ができなくなったら教員を辞める」であり、一つは「学生さんに頭ごなしに質問内容を否定するようになったら教員を辞める」、また「私に一人でも嫌いな学生さんができたら教員を辞める」というものでありました。とくに最後の、「嫌いな学生さんが現れたら辞める」ということには重きを置いていました。教育は相手を尊重し、理解し、受け入れることでしか成立しません。そうした、教授する側の態度が学生さんとの信頼関係を構築し、学生さんの学ぶ姿勢を強固なものにする原動力になると思っています。
 
人は、直接、好き嫌いを表明されなくても、何となく相手の心根を感じ取れるもので、自分を嫌っている相手を好きになることはありません。このような関係からは信頼関係が生まれることはなく、「教え、学ぶ」という、お互いの立場があったとしても信頼関係がない所には真の学びは成立しないのです。従って、私の中に嫌いな学生さんが存在するということは、私の教育者としての職業を否定することになると考えていたからです。
 
こうした関係性は医療人と患者さんとの関係にも通じるものがあります。患者さんとの信頼関係のない治療には全く効果を期待できません。私が、柔道整復師として医療機関に勤務していたときの話です。ある土曜日の時間外に、救急車で骨折の高齢女性が搬入されました。患者さんにとって不本意な搬送であったようで、到着するなり「私は、この病院に来る訳ではなかった。」と言いました。現在では考えられないことですが、月曜日に希望の医療機関に転送することを約束して入院してもらうことになり、骨折部の徒手整復を行うことになりました。整復法は、一般的で非常に信頼性の高い方法であり、私も、過去に一度もうまく行かなかったことのない方法を採用して実施したのですが、目的を達することができませんでした。
 
一方、別のとき、小児の骨折患者が自宅から電車に乗って2時間かけ母親に連れられ来院しました。診察をした結果、入院して治療することになり、徒手整復をすることになりました。一般に徒手整復が難しい骨折だったのですが、小児であることを考えて実施することになり、実施に当たり母親に「大変難しい骨折ですので手術しないで治すことができるか判りません。うまく行かない場合には手術になります。」と説明したところ、母親は「この病院でうまく行かなかったら、どこの病院でもうまく行かないでしょう、そう思ってこの病院まで来ました。ですから是非宜しくお願いします。」と言いました。この患者の徒手整復は普通では考えられないほどうまく行き、手術をすることなく治療が済みました。
 
全くエビデンスのないことですが、私は、治療の成果には患者と治療者それぞれの心理状態が大きく影響し、信頼関係の有無が成否に大きく作用することを、この事例が示していると考えています。
 
私は、皆さんの卒業を以て校長職を辞しますが、たぶん、3,000人を越える学生さんに直接授業をしてきました。教員であった間、私は学生さん一人一人が大好きで、幸いなことに、たった一人も私の方から嫌いになった学生さんは居ないで教員生活を全うできました。そして、私を信頼してくれた多くの学生さんに講義を聴いて頂き、少しは役に立ったと自負しています。皆さんも、これから出会う患者さん一人一人を大好きになって、患者さんとの強固な信頼関係を構築し、情熱を注いで治療に当たってください。そして、皆さんが持っている知識と技術を、また、これから生涯にわたって獲得する知識と技術を患者さんのために使って、医療人としての生涯を全うしてください。
 
本校の設置法人呉竹学園は、我が国で最も古い東洋医学の教育機関の一つで、1926年に「鍼灸の火を消さない」という、創立者、坂本貢先生の強い思いによって、当時、猛烈な逆風の中にあった東洋医学の体系的な教育を目指して開設された「東洋温灸医学院」を前身としています。以来、90年以上にわたり呉竹学園は東洋医学一筋に教育を行って参りました。坂本貢先生の意志を受け継いだ本校は教育理念を「医の東西を問わず豊かな知識と技術を備え、全人的医療を施すことのできる医療人を育成すること」としています。そして、教育目標を、「卒前・卒後を一貫した教育体系として捉え、教育施設ならびに付設する医療施設を有機的に活用しながら、東西医療への理解を深めると同時に医療実践能力を修得する完結的教育を施して行く。また、知識・技術の修得と併せて医療を行う者としての人格形成の教育にも力を注ぐ」としています。
 
改めて申し挙げますが、「医の東西を問わず十分な知識と技術を備え」とは、本来業務である鍼灸、あん摩・マッサージ・指圧、柔道整復を行うに当たり、東洋医学的な知識や技術ばかりでなく、西洋医学の知識や西洋医学的検証に裏付けられた施術を提供する能力を持つことであります。
 
「全人的な医療を施すことができる医療人」とは、「病気を診て人を見ず」といった医療ではなく、施術を行うに当たり病んでいる部分のみに捕らわれることなく、患者さんの悩みや困難など「心の痛み」に思いを馳せ、また、患者さんの背景にまで心を砕き、生活者としての患者さん全体を一個の人間として治療できる医療人のことです。
 
本校が「呉竹メディカルクリニック」を付設しているのは、西洋医学も東洋医学もそれぞれが医学を構成する要素として捉える、本校の教育理念や教育目標を実現するためであり、教員ならびに学生さんが西洋医学的な医療現場にも参加して、その実態に直接触れ東洋医学に対して西洋医学的な検証を行い、東洋医学のさらなる向上を目指すためです。こうした考えで教育に当たっている本校で学んだことは、皆さんにとって力になり、誇りになると思っています。自信を持って社会に飛び立って行ってください。
 
ところで、皆さんには在学中、多くの友人ができたことと思います。3年間の苦楽を共にして形成された友人関係は、掛け替えのない宝物で、生涯にわたり続きます。今後の人生では皆さんの誰もが、必ず一度は壁に突き当たりますが、決して一人ではありません。いつでも皆さんを心から応援するたくさんの仲間がいます。母校、呉竹医療専門学校も皆さんの活躍を全力で応援していきます。
 
春は別れと旅立ちのときです。今の皆さんは卒業という別れと、社会に一歩を踏み出す旅立ちを同時に迎えています。別れである卒業は皆さんを安堵と寂しさの入り交じった複雑な気持ちにさせるでしょう。また、旅立ちでは希望を持ち未来への決意を新たにすることでしょう。皆さんには、過ぎし日々への感謝と未来への希望や決意という、今の新鮮な気持ちを生涯にわたって失うことなく、社会の付託に応えられる医療人になることを目指して、知識・技術の修得と共に心の研鑽を積んで頂きたいと思っています。
 
そのために必要があるときには、いつでも学校に戻ってきてください。呉竹医療専門学校は新しく着任する齋藤秀樹校長を始め、全職員を挙げて皆さんが自ら向上するための学びの場をいつでも開いておきます。
 
最後になりましたが、皆さんお一人お一人がこれからの長い生涯、幸運に恵まれ、悔いのない人生を送られることを祈りつつ、私からの式辞とさせて頂きます。

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