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平成27年度卒業式 式辞

2016年03月17日


式 辞

本日、ここに集われた164名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。卒業式にあたり皆さんの今日までのご努力と研鑽とを、学校を代表して心からたたえます。また、この日まで、皆さんの勉学を支えてこられたご父兄、ご家族の皆さんにも、深く敬意を表したいと思います。本当におめでとうございます。

 

さて、本校での3年間の学びを終え、皆さんの多くが医療の道に進まれるものと思いますが、本日、私は、「プロフェッショナリズム」についてお話したいと思います。

 

昨年、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組で、ビル清掃のプロである「新津春子」さんという人が紹介されました。番組のサブタイトルは「心を込めて、あたりまえの日常を」というものです。ご覧になった人もいるかと思いますが、彼女は羽田空港がイギリスの世界最大の航空業界格付け会社・スカイトラック社によって2013年、2014年の2年連続で世界で最も清潔な空港に選ばれる原動力になった人です。新津さんは第二次世界大戦時に中国に残された日本人孤児を父に持つ残留日本人孤児2世で、17歳のとき帰国しました。けれども、家族はみんな日本語が話せず仕事もなかったそうです。しかし、「言葉は話せなくても清掃はできるから」と清掃の仕事に就き以来20年間、ずっと続けているそうです。新津さんは「清掃の仕事は確かにきついです。でも、だから何?私は気にしていない、だって私はこの仕事が大好きだから」と言います。普通なら見逃しそうな、わずかな床の汚れを数十メートル先から見付け、「あった!」と叫ぶやいなや嬉嬉として汚れを落としてゆきます。しかも、ただ目に見える汚れを落とすことで満足しません。例えば、トイレに設置してある手の乾燥機など、見た目できれいになっただけでは満足せず「まだにおいが残っているからだめ」と乾燥機を分解して、においの原因となっている汚れを探し出して清掃するという徹底ぶりです。

どうしてそこまでするのかについて、新津さんは「仕事をしている以上プロですよね。プロである以上そこまでちゃんとやらないと。気持ち。気持ち。別に誰に言われている訳ではないけれど。でも、こうすると全体がきれいに見えるでしょ。やっぱり、全体をきれいにすると気持ちいいじゃないですか」と言います。そして、仕事の流儀として「心を込める、ということです。心とは自分の優しい気持ちですね。掃除をする物や、それを使う人を思いやる気持ちです。心を込めないと本当の意味できれいにできないんですね。その物や使う人のためにどこまでできるかを、常に考えて清掃しています。心を込めればいろんなことも思いつくし、自分の気持ちの安らぎができると、人にも幸せを与えられると思うのです」とも言います。

掃除をするといえば、とくに水回りの清掃など面倒くさく、私などいやな気持ちになります。しかし、新津さんは清掃という仕事に目を向けるのではなく、掃除する物やそれを使う人に対して優しい心を持って清掃をしています。私は、これが「プロフェッショナリズム」だと思います。そして、夜勤の仕事を終えた新津さんは最後に「今日も、お客様にとって幸せな一日になるといいね」と言って帰って行きました。

 

現在、多くの医学部で「プロフェッショナリズム」教育が行われています。背景には「外科医が病気の腎臓を移植した」、「製薬会社の要請に従って臨床知見のデータを改ざんした」、「多くの若い医師が、自分に与えられた使命よりも、自由な時間や趣味と娯楽の充実を求め9時5時の勤務を希望する」などメディアや患者の目から見て医師の立場が低下していて、「社会と医師との関係が悪化している」ということがあると思っています。

医療の一端を担う皆さんには「プロフェッショナリズム」ということを強く意識して今後の活動を行って頂きたいと思っています。「プロフェッショナル」は個々の専門職あるいは専門職集団を指し「プロフェッショナリズム」はプロフェッショナルとしての気概や職業倫理を持って行動することだと考えています。2002年に欧米合同3学会が策定した医師憲章には「プロフェッショナル」として遵守すべき3つの原則と10の責務が掲げられています。すなわち、原則として①患者さんの福利優先の原則、②患者さんの自律性に関する原則、③社会正義の原則であり、責務として①プロフェッショナルとしての能力に関する責務、②患者さんに対して正直である責務、③患者情報を守秘する責務、④患者さんとの適切な関係を維持する責務、⑤医療の質を向上させる責務、⑥医療へのアクセスを向上させる責務、⑦有限な医療資源の適正配置に関する責務、⑧科学的な知識に関する責務、⑨利害衝突に適切に対処して信頼を維持する責務、⑩プロフェッショナルの責任(人材育成)を果たす責務であります。これらは完結型の治療活動を行う医療人である「あん摩マッサージ指圧師」、「はり師」、「きゅう師」、「柔道整復師」にも全く同じことが求められていると思っています。

すなわち、医療人の「プロフェッショナル」とは高度な知識と技術によって患者の依頼事項をかなえる独立した職業であると考えています。それゆえ、医療人は①極めて高度な知識や技術に基づいた職業能力を有していなければならず、②特定の患者からの特定の依頼事項、言い換えれば疾病や外傷の治療を解決するという仕事形式であり、③職業人として独立した身分を保持しなければならないのです。

医療人のプロフェッショナルとしての活動は①根本的に知的で一人一人に大きな責任を伴い、②単なるルーチンではなく学習された膨大な知識に基づいた業務であり、③学問的、理論的というよりも実践的で、④その技術は教授可能で、プロフェッショナル育成の基盤となっている、⑤プロフェッショナル同士の強い組織を作っていて、⑥行動は利他主義によって動機付けられ、自分たちが何らかの社会の利益のために働いていると自覚することが重要です。

言い換えれば、皆さんは患者さんとの無書面契約に基づいて患者さんの疾病や外傷を治癒に至らせる義務があり、その義務を遂行するために生涯に渡って知識・技術の研鑽に務め、その行為は利他主義に基づいたもので、決して私のためであってはならない。また、全ての患者さんに対して平等に振る舞い患者さんの地位や経済力の差異により患者さんとの距離を変えるなどあってはならず、患者さんとの良好な関係を維持する責務があるのです。

このように皆さんは生涯に渡って「誰か」のために尽くすことを義務づけられた職業に就くのです。この観点に照らして正しい行動を採らなければならないことを肝に銘じなければなりません。学校での3年間の勉学も、今後の研鑽も、全てが、「患者さん」のためにあることは明白です。身に付けた知識や技術は「患者さん」のためだけに使うもので、自分のために使うものではありません。そうであるならば、皆さんの中に怠惰な心が起こり、生涯にわたる研鑽を怠るなどということを、「患者さん」は断じて許すことができないはずです。

本校は皆さんの在学中、平成26年3月に全ての課程が文部科学省から職業実践専門課程に認定され、平成27年には文部科学省の委託事業により、私立専門学校等評価機構が行いました柔道整復師養成分野に係る第三者評価モデル事業による柔道整復科の第三者評価をうけ高い評価を戴きました。これも、皆さんそれぞれが本校の教育システムについて深くご理解を頂き、ご協力を頂いた結果だと思っていて、私は、心から感謝しています。皆さんは、そうした高い評価を受けている学校の卒業生であることに誇りを持ってください。それと同時に卒業後も本校の名声を汚さないように努力を続けていってください。

 皆さんには、新津さんのように自分の職業が大好きになって、「今日も、患者さんにとって幸せな一日になるといいね」という気持ちを基盤にし、心を込めて診療を行う医療人になって頂きたいのです。そして、人が困難に直面しているときや苦痛を感じているときに、困難や苦痛の本質を洞察することができ、深い思いやりの心もって接することのできる医療人としてのプロフェッショナルになって頂きたいのです。そのための研鑽を積むために学校に求めるものがあれば、いつでも学校に戻ってきてください。呉竹医療専門学校は皆さんが自ら向上するための学びの場をいつでも開いておきます。

 最後になりましたが、皆さんお一人お一人がこれからの長い生涯、幸運に恵まれ、悔いのない人生を送られることを祈りつつ、私からの式辞とさせていただきます。

呉竹医療専門学校 校長 細野昇


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